スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

月の摂動

太陽の光が地球に到達するには、およそ8分程度かかる。このことから、天文学的スケールでは、地球と太陽の距離は非常に近いともいえる。この地球と太陽間の距離を1天文単位(AU=アストロノミカル・ユニット)と言い、これを光年に直すと約0.000016光年となる。


では、プロトンや電子などの荷電粒子からなる太陽風は、どのくらいの時間をかけて地球に降り注いでいるのだろうか。Wikipediaによると、地球の公転軌道に達するときの太陽風の速さは約300~900km/sとある(太陽風 - Wikipedia)。つまり、太陽風が地球に到達するまで約2~4日程度かかる計算になる。


それでは、月の摂動が地球に及ぼす時間レンジはどのくらいのスケールで起こるのだろうか。比較的長いものでは、月の「章動」運動による18.6年周期の変動が知られている。
千島・アリューシャン列島海峡付近における海面水温の長期変動(中央水産研究所)


より短期的な月の摂動の例としては、月の満ち欠けと降雨の関係を挙げることができる。根本順吉氏の「月からのシグナル」には、新月および満月の三から四日後にかけて雨が降りやすい傾向にあることを見出したブラッドリーらによる論文が紹介されている。


moon-rain
アメリカにおける月齢と降雨量の関係
The Lunar Synodical Period and Precipitation in the United States:
G. W. Brier and D. A. Bradley, Journal of the Atmospheric Sciences, 21, 386 (1964)


南半球における降雨氷晶核濃度と月齢の関係
The Results of Large–Scale Measurements of Natural Ice Nuclei:
E.K. Bigg and G.T. Miles, Journal of the Atmospheric Sciences, 21, 396 (1964)


月は、はじめ地球に入射している流星塵に影響し、次にこれが流星塵を一部としてふくむ下層大気の氷晶核に結果としてあらわれる。そして、最後に、氷晶核の数に関連したグローバルな降水と月齢の関係としてあらわれてくる仕組みが考えられることになるのである。

p115、根本順吉、「月からのシグナル」、筑摩書房、1995


ビッグは、氷晶核の起源を、散在流星として直接地球に入射してくるものを考えたのであるが、ヴァンドは次のように考えた。木星族の流星群が、太陽にちかづいたり遠ざかったりする時に、地球の公転軌道を横切り、その時、地球をまわる月の表面に落下、これが毎秒一〇キロくらいの速さで月から脱出してくる。これがテクタイトに似た粒子のせまい流れとなって地球まではね返ってくる。

p117、根本順吉、「月からのシグナル」、筑摩書房、1995


なぜ、月齢と降雨に関係があるのだろうか。月は宇宙塵を攪拌しながら公転をしており、その攪拌された宇宙塵が地球にも降り注ぎ影響を与えているのではないかとの説がある。1994年には、デルモットらにより「太陽系内の小惑星塵が、地球の公転軌道に沿って閉じ込められており、地球はこの塵を絶えず引きずりながら公転しているらしい」ことが発見されている。
A circumsolar ring of asteroidal dust in resonant lock with the Earth:
Stanley F. Dermott et al, Nature, 369, 719 (1994)


dust-cloud
Marc Kuchner et al., Dynamics of Exozodiacal Clouds


北京オリンピックでも話題になったが、人工降雨の実験では大気中に微小粒子をばらまいたりもする。いわゆる種結晶となるものがあれば、結晶成長を著しく促すことができるようになる。スベンスマルクらは、雲の形成過程に高エネルギー宇宙線からの二次粒子がトリガーとなっているとの説を唱えている。どうやら、雲の形成については、宇宙塵や宇宙線など宇宙物理学的な摂動が無視できない働きを担っている可能性があるようだ。


太陽の11年周期と月の18.6年周期

太陽活動の11年周期の変動と気温の関係は、長期記録された気温変化をフーリエ変換スペクトルにすることで見出すことができる。下記に紹介する図を見ると、11年周期の気温変動の他に、さらに18.6年周期の気温変動を見出すことができる。これは月の「章動」運動によるものと考えられる。

sun-moon-cycle

Solar Cycle Signal in Air Temperature in North America: Amplitude, Gradient, Phase and Distribution:
Robert G. Currie, Journal of the Atmospheric Sciences, 38, 808 (1981)


北極振動(Arctic oscillation )や北大西洋振動(NAO)に対する月の摂動の影響を指摘する論文もある。

The high signal-to-noise ratio shows that the lunar nodal spectrum can have a major influence on the Arctic oscillation system, which influences long-term fluctuations in the extent of Arctic ice. The lunar nodal spectrum in the coverage of Arctic ice is a potential influence on the NAO winter index, weather, and climate.


6-18-74
The influence of the lunar nodal cycle on Arctic climate:
Harald Yndestad, Journal of Marine Science, 63, 401 (2006)


一方、太陽活動と銀河宇宙線によってもたらされる摂動は海洋の運動を通じ、中長期にわたって地球を駆け巡り、地球の各地域の気候に影響を与えているようだ。


time-lag
Evidence for a physical linkage between galactic cosmic rays and regional climate time series
Charles A. Perry, Advances in Space Research, 40, 353 (2007)



私が始めて宇宙塵という言葉に触れたのは、おそらく宮沢賢治の「春と修羅」からではないかと思う。賢治の詩はある種の感慨をもたらすが、それは星空を見上げたときに感じる果てしなさに似ている。天文学的スケールの前ではすべての現象が刹那となる。瞬く星のごとく、生命現象*も揺らいでいるのだ。


わたくしといふ現象は 仮定された有機交流電燈の ひとつの青い照明です (あらゆる透明な幽霊の複合体)



これらについて人や銀河や修羅や海胆は

宇宙塵をたべ、または空気や塩水を呼吸しながら

それぞれ新鮮な本体論もかんがへませうが

それらも畢竟こゝろのひとつの風物です

たゞたしかに記録されたこれらのけしきは

記録されたそのとほりのこのけしきで

それが虚無ならば虚無自身がこのとほりで

ある程度まではみんなに共通いたします

(すべてがわたくしの中のみんなであるやうに

みんなのおのおののなかのすべてですから)

宮沢賢治春と修羅 〔第一集〕/序


* あるいは気候もそうであろう。自然現象は揺らぎやリズム、あるいは固有の周期をもつ。

theme : 宇宙・科学・技術
genre : 学問・文化・芸術

comment

Secret

プロフィール

TheorySurgery

Author:TheorySurgery
社会科学と疑似科学の際どい境界線を探りながら、文系と理系の学問の乖離やらを考えています。分光学を視点として温暖化懐疑論も展開してます。

温暖化論を学ぶための入門用ホームページつくりました。↓ ご意見承ります。
| HP | BBS | MAIL|
コメントの返事は遅めかもしれませんが、コメント、トラバ、リンク、議論など、できるだけ対応します。

最近の記事
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

ブログ内検索
最近のコメント
カテゴリー
月別アーカイブ
Favorite song

・Jeff Beck & Jennifer Batten
What Mama Said
・The Black Crowes
Remedy
・Jimi Hendrix
All Along the Watchtower
・Jeff Buckley
Grace
Mojo Pin
・Yardbirds
幻の十年
・Arctic Monkeys
A view from the afternoon
・Jefferson Airplane
White Rabbit
・Beatles
Helter Skelter
・Bad Company
Wishing Well
Joe Fabulous
・Cream
I Feel Free
Crossroads
・Montrose
I Got the Fire
・Eric Clapton
Forever Man
・AC/DC
Dirty Deeds Done Dirt Cheap
・Johnny, Louis & Char
Finger
・Rock'n Roll Standard Club Band

QRコード
QR
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSフィード
管理人ホームページ

マスコミに踊らされないための地球温暖化論入門
温室効果ガスの分光学:励起状態ダイナミクス
水蒸気フィードバックと気候感度の妥当性
コンセンサスとは
お勧め図書

管理人掲示板

Eco-logical is non-logical:BBS

World Climate Widget
温暖化懐疑論サイト

『環境問題』を考える
思えばバカな企画だった
ひと味ちがうリンク集
温暖化は進んでいるか
いわゆる「温暖化防止」の罵倒論
地球温暖化は人類の責任ではありません

太陽活動と気候の関係
太陽関連

ひので(SOLAR-B)
ようこう(SOLAR-A)
SOHO (探査機)
宇宙天気ニュース
太陽地球環境研究所
「太陽」に関連したホームページ
J-STORE(明細:黒点数の予測方法)
宇宙の科学 第3章 太陽
The Sun in Motion

温暖化関連
環境団体とか

反捕鯨団体あれこれ
動物保護運動の虚像
クジラ戦争30年
World Hunger: Twelve Myths
ゴールド・トーマス『地底深層ガス』

リンク
フリーエリア

環境問題が解決しないのは、何で?
オーロラの旅
日本の古本屋
オンライン書店比較サイト
The Internet Journal of Vibrational Spectroscopy
Science和文要約
Nature Asia-Pacific
サイエンスポータル
日英・英日機械翻訳(科学技術分野)
エキサイト翻訳
Yahoo!翻訳

疑似科学など

「科学とニセ科学」レジュメ(ver.2)
疑似科学批評(マイナスイオンその他)
ブレジンスキー 『大いなる失敗』
Skeptic's Wiki
OPEN UNIVERSE of the Japan Popper Society
懐疑論者の祈り

最近のトラックバック
MUSIC LINK

脳みそサラダ外科

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。