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お詫びと訂正:大気からの再放射の解釈について

合成の誤謬
私はここで皆さんにお詫びしたいと思います。これまで私はJack Barrettの論考などをもとにして、分子論的な視点から大気からの再放射は微弱ではないかとの考察を行ってきました(CO2による「再放射」の量子収率)。


これは(単発の事象として)ミクロな視点で見れば正しいのですが、(定常的な現象として)マクロな視点から見ると正しくありません。たとえば、下記のサイトの24~27ページを参照すると、比較的分かりやすいと思います。
基礎物理セミナー レジュメ集 (第 5 章本文)


24ページには、局所熱力学平衡が成り立つ条件として、『衝突による励起/脱励起速度は十分速く, 放射過程よりも衝突過程が支配的である状況』とされ、26ページには、『ただしΦ= a21/A21 である.局所熱力学平衡状態では衝突による励起/脱励起作用が支配的であるので, Φ→ ∞となり, J → B すなわち放射源関数はプランク関数となる』

『Φは, 衝突過程, 放射過程におけるそれぞれの励起状態から緩和する確率a21, A21の比である. この節の最初の議論から期待していたように, Jº ⋍ Bº, すなわち局所熱力学平衡は加熱率が小さいか, 衝突過程が支配的である, すなわちΦが大きい場合に成立する』とあります。


これをまとめますと、「局所熱力学平衡では、分子衝突による励起・脱励起過程が支配的になるために放射源関数がプランク関数で近似することができる」ようになり、その結果、赤外活性分子による大気放射が近似的に黒体放射スペクトルを描くことができるようになるのではないかと考えられます。つまり、無放射緩和過程が支配的であるからこそ、局所熱力学平衡が成り立っており、もし、放射による緩和過程が支配的ならば、局所熱力学平衡は成り立たない、と言い換えることができると思います。


私の視点で欠けていたものは『励起源』としての衝突過程です。つまり、励起状態からの緩和過程のみに注目し過ぎたということです。衝突励起の速度が大きければ、単位時間当たりの励起回数は非常に大きなものとなります。一方、衝突励起、あるいは衝突による脱励起の速度が非常に遅ければ、単位時間当たりの励起回数は非常に少なくなるものと考えられます。


私はボルツマン分布による励起濃度の推定は行いましたが、それ以上の踏み込んだ考察に欠けたため、今回のようにミクロからマクロを結ぶ過程で過ちが生じたのだろうと思います。太陽のような高温な物体が黒体放射を描くのも、衝突による励起・脱励起のサイクルが非常に速いため、定常的な発光強度としてはプランク関数を描くことができるのではないかと考えられます。

 



ここで、発光強度に対する私のイメージを述べたいと思います(さらに分配関数やボース・アインシュタインの分布関数などを用いれば、プランク関数へと直接導くことができるようになるかもしれません)。ある励起濃度にある分子が単一指数関数で減衰する場合、その発光強度は次のように表すことができます。


発光強度 ∝ 励起濃度 × ∫exp(-kt) = 励起濃度 / k


ここで、kは励起状態における緩和の速度定数であり、放射、無放射緩和の速度定数の和であらわされます(k = kr + knr )。つまり、無放射緩和の速度定数(knr)が大きければ、一回の励起における発光強度は小さくなります。しかし、定常的な発光強度は、この発光強度に単位時間当たりの励起回数k'(s-1)をかけたものとなります。


定常発光強度 ∝ (励起濃度 / k ) × k'  = 励起濃度 × k' / ( kr + knr )



さらに、kとk'が等しければ、定常発光強度は励起濃度のみに依存することになります。

 



定常発光強度 ∝ 励起濃度

 

最後に分子論的な視点で述べますと、単位時間当たりの励起回数k'は、並進-振動エネルギー移動の速度定数(kT-V)に相当するのではないかと考えられます。局所熱力学平衡では、衝突による励起と脱励起が支配的であるため、その温度であらわされる励起濃度の分布(ボルツマン分布)がそのままマクロな実態となるため、高温な物体からの放射をプランク関数として表すことができるようになるものと考えられます。

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2008/01/05 16:38|付けの他の記事へのコメントで、思考実験のススメを書かせていただきました。
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 (赤外線を完全反射する断熱壁に囲まれた大気という)熱平衡状態に限定して言えば、温室効果ガスによる赤外線の放射量と吸収量は完全に一致することになるはずですね。ガス分子の温度と赤外線の密度はある一定の比率を保って定常化しているわけです。

 この状態のガスに対して、一瞬だけ断熱壁が開いて外部から赤外線が入った場合を想定してみてはどうでしょうか。
---

 訂正を読む限りでは、この議論の続きができるようになった、と判断していいんでしょうね?

CO2、水蒸気の放射吸収率

いつも参考にさせてもらっています。
下記のブログで、CO2の放射吸収率にはCO2の濃度が増えていっても飽和する値が存在するということを紹介されています。

http://homepage1.nifty.com/gfk/housyaritsu-keisan.htm

SGWさん、こんにちは。前回の議論では最終的にはSGWさんの「床のような大きな熱容量を持つものを暖めるには、水蒸気からのふく射も水蒸気の凝縮も共に力不足だということです。」という主張にそうかたちで、多少の意見の調整が行うことができたように思います。
http://feliscatus.blog77.fc2.com/blog-entry-76.html


今回の思考実験の提案ですが、もう少しその意図を述べていただけると分かりやすいように思います。または思考実験でなく、具体的な例を用いた方が理解しやすい場合もあると思います。私のように机上の空論だけでは間違った結論を出す場合もあります。それを訂正できるのは観測事実だけです。

気候モデルと観測事実の不一致

期待人さん、こんちは。気候感度に関しては、私も過大評価ではないかという印象を持っています。現行の気候モデルと観測の不一致は、特に熱帯の対流圏中層で顕著のようです。
http://scienceandpublicpolicy.org/monckton_papers/greenhouse_warming_what_greenhouse_warming_.html
http://icecap.us/images/uploads/Evans-CO2DoesNotCauseGW.pdf
D. H. Douglass et al., Int. J. Climatol. (2007)
http://icecap.us/images/uploads/DOUGLASPAPER.pdf


これはCO2の増加によって潜熱輸送が活発になるため、対流圏中層において顕著な昇温効果が起こるとモデルでは示しているようですが、ラジオゾンデなどによる観測事実はそうなっていません。これは雲の挙動に関してモデルに根本的な間違いがあるためともいえると思います。

雲が左右する巨大放熱口(Iris hypothesis)

これは熱帯における雲のフィードバックはポジティブではなく、むしろネガティブフィードバックとして働いているのではないかとのリンゼン(Richard Lindzen)氏の説を裏付ける一例だと思います。
http://en.wikipedia.org/wiki/Richard_Lindzen


リンゼン氏によると、温暖化は巻雲の減少をもたらし、その結果、放熱口が開かれることで、温度調整が行われているとのことです。これはアイリスの絞りにたとえ、アイリス仮説と呼んでいるようです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Iris_hypothesis/


観測事実により即した気候感度はリンゼンらによっても見積もられており、それは0.64℃程度のオーダーとなっています。
http://www.junkscience.com/Greenhouse/co2greenhouse-X2.png
http://www.junkscience.com/Greenhouse


リンゼン氏の説については、小父蔵さんのブログにシンガーの本から一部抜粋がありましたので、紹介しておきます。
http://natton.blog.so-net.ne.jp/2008-08-16

もう少し教えてください

すみません。ひとつ教えてください。

赤外活性分子からの「再放射」を想定するときには、放射される電磁波は吸収した赤外線と同じ波長になると考えていますが、

> 「局所熱力学平衡では、分子衝突による励起・脱励起過程が支配的になるために放射源関数がプランク関数で近似することができる」ようになり、その結果、赤外活性分子による大気放射が近似的に黒体放射スペクトルを描くことができるようになるのではないかと考えられます。

この場合の「黒体放射スペクトル」とは、その温度に応じた連続スペクトルの「黒体放射」として、扱うことができるという意味なのでしょうか? つまり、例えば、ある高度の大気温度が270Kだったら、そこでは、その温度の黒体放射スペクトルとなる、ということですか?

再放射の定義と線スペクトル

TSUNEさん、こんにちは。励起経路には主に二通りあると考えられます。ひとつは赤外光を吸収し、振動励起状態になる過程です。もう一つは分子衝突により振動励起される過程です。「再放射」の定義を前者の過程としますと、私の見積もりですとCO2の変角振動励起状態からの再放射の割合は0.3%です。残りの99.7%は無放射的に振動基底状態へと失活するものと考えられます。
http://feliscatus.blog77.fc2.com/blog-entry-70.html


一方、「再放射」の定義を後者の過程としますと、放射の量子収率自体は0.3%と変わりませんが、絶えず衝突により励起されていますので、正味の放射強度としてはその温度におけるプランク関数に漸近していくものと考えられます。それは黒体放射スペクトルではなく、線スペクトルになります。たとえば、大気放射スペクトルの観測結果によると、それぞれの赤外活性分子の吸収スペクトルと同じ波長領域から大気放射が起こっていることが分かります。
http://www.nsf.gov/od/opp/antarct/ajus/nsf9828/9828html/graphic/la-154.htm


>>放射される電磁波は吸収した赤外線と同じ波長になる


一般的にはほとんど同じ波長とみなしても問題はないと思います。しかし、厳密には放射する波長が吸収した波長と同じとは限らないと思います。その理由の一つとして、振動準位が副準位として回転準位をもつことがあげられます。振動励起状態から振動基底状態へ緩和するときには、振動基底状態の持つ各回転準位への遷移もある確率で起こるものと考えられます。


つまり、振動遷移に由来する赤外放射スペクトルは、その振動準位が持つ副準位の分だけ幅を持ったブロードな波長範囲で観測されることになります。ただ、幅があると申しましても、たとえば大気放射の観測によると、CO2では550~770cm-1程度の範囲に収まるようです。
http://www.nsf.gov/od/opp/antarct/ajus/nsf9828/9828html/graphic/la-154.htm


もう一つの可能性は分子内振動エネルギー再分配過程(IVR)によって、より低エネルギーの振動励起準位への遷移が起こる可能性が考えられます。たとえば、ある分子に5μmの赤外光を吸収させても、より低エネルギーの振動準位から15μmの赤外光が放出される場合もあると思います。ただ、これらの過程はあくまで可能性の話であり、各過程の起こりやすさについては細かい検討が必要になってくると思います。また、振動励起状態からの放射過程がマイナーな過程であることに変わりはないと思います。

ご回答、ありがとうございます

ぶりるさん、こんにちは。ご回答ありがとうございました。

リンクをされたグラフは、いわゆる「大気からの下向き放射」の観測値でしょうか?

550cm-1よりも長い波長はグラフに示されてないので分かりませんが、1210cm-1あたりから短い波長の水蒸気の吸収域については、ずいぶん放射エネルギーが低いのですね。下向き放射のうちCO2によるエネルギーはかなり大きいということなのでしょうか?

地表からの黒体放射の分光分布にたいして、水蒸気が吸収する波長域ではかなりの吸収エネルギーがあると思うのですが、このCO2との放射量の違いは、何に由来するのでしょうか?

それとも僕の解釈が勘違いなのでしょうか?

TSUNEさん、こんにちは。返事が送れてすみません。私の紹介した図はTSUNEさんの仰るとおりで、「大気からの下向き放射」の観測値です。観測場所はロス海(Ross Sea、表面温度は-16C)のようです。http://www.nsf.gov/od/opp/antarct/ajus/nsf9828/9828html/graphic/la-154.htm


確かに、観測波長は大気の窓領域を中心としており、長波長側のスペクトルがないので、水蒸気の寄与率を考えるには不十分な図だと思います(検出器の赤外光に対する分光感度特性による制限があるのかも知れませんが)。550cm-1よりも少しだけ低エネルギー側まで観測されたデータですと、以下のようになっています。
http://cimss.ssec.wisc.edu/fireiii/results/980518/aerinsa_radiance_samples.jpg
http://cimss.ssec.wisc.edu/aeri/science/aeriret/


これを見ると、水蒸気による寄与の大きさがよく分かると思います。大気放射の水蒸気による寄与は、大気の水蒸気量(湿度)と大気温度を反映したものになると思います。真鍋モデルでは、低温の極地ほどCO2による昇温効果を大きく見積もっています。これはアルベドや水蒸気などによるフィードバック効果を仮定したことによる寄与が大きいのかもしれません。


とくに水蒸気フィードバックの妥当性については気になるところです。何か過去の水蒸気量の指標となるものが存在するのでしょうか?検証の難しさで言えば、過去の水蒸気量の推定が挙げられてしかるべき事項ではないかと私は思います。


Atmospheric Radiation
http://www.jgsee.kmutt.ac.th/exell/Solar/Atmosph.html
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