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無放射的なエネルギーの散逸過程の寄与の定式化

無放射的なエネルギーの散逸過程による放射伝達の破綻

一般に、ある温度をもつ物体はシュテファン・ボルツマン則であらわされるような放射を行っていると考えられている。しかし、シュテファン・ボルツマン則やプランク放射は黒体を想定しているために、実際の分子などにそのまま当てはめることはできない。その理由の一つは、「分子の持つスペクトルが連続スペクトルを有していない」ということがあげられる。もう一つ重要な点は、分子衝突などに誘起された「無放射的なエネルギーの散逸過程」による影響が考えられる。



分子衝突は、しばし励起分子から他の基底分子への無放射的なエネルギー移動を誘起し、正味の放射強度を減少させる。特に、この無放射緩和過程があるために、大気を光学的厚さだけの関数としてあらわすことができなくなり、対流圏大気において放射平衡モデルが破綻する原因の一つともなっている。対流圏とも言うように、下層大気では、放射よりも伝導や対流などの「無放射的な伝熱過程によるダイナミクス」がより重要な役割を担っているものと考えられる。

 

プランクの放射式における無放射緩和過程の導入

そこで、実際の気体分子と黒体における放射の違いについて、より明確にするための定式化を行ってみた。方法としては速度論的アプローチを用いて、黒体放射におけるプランクの式に無放射緩和過程の寄与の導入を試みたまず、励起量子準位(N2)から基底量子準位(N1)への放射遷移の速度式は、誘導吸収、自然放射、誘導放出を用いて表すことができる。



dN2 / dt = - ( A + B・I  ) N2 +  B・I・N1

 

ここで、AはアインシュタインのA係数、BはアインシュタインのB係数、Iは場に入射される放射強度である。これを解くと、

 

I(ν,T) = 8hν3 / {c3 [ exp(hν/ kBT) - 1 ] }

 

となる。ここで、hはプランク定数、cは光速、kBはボルツマン定数、Tは温度、νは振動数である。また、このときの放射強度I(ν,T)をE(ν,T) と定義する。

 

E(ν,T) = 8πhν3 / {c3 [ exp(hν/ kBT) - 1 ] }

 

これはプランクの式(プランク分布)とも呼ばれ、ある振動数のスペクトル成分における黒体放射の強度(空洞放射強度)を示している。つまり、黒体放射におけるスペクトル分布はプランクの式によってあらわすことができる。

実際の気体分子は、さらに、分子衝突による無放射緩和過程を考慮する必要があるので、



dN2/ dt = - ( A + B・I + knr ) N2 + ( B・I + kZ ) N1

 

となる。ここで、kZ 、knr は、それぞれ衝突による励起速度および脱励起速度である。



定常状態が近似できる場合、



dN2 / dt = 0



とおくことができ、 式を整理すると、



( A + B・I + knr ) N2 / N1 = B・I + kZ



となる。ここで、両状態間の比を次式のようにボルツマン分布であらわし、



N2 / N1 =exp( - hν / kBT)

 

さらにB・Iについてまとめると、


A + knr -  kZ exp( hν / kBT ) = B・I ・{exp( hν / kBT ) - 1}



となる。ここで、次の関係式を用いてBを消去し、



A= ( 8πhν3 / c3 )・B



さらに、式の簡略化のために次式を定義する(アレニウスの式と同型)。



kZ = exp( - hν / kBT ) ・kET

 

ここで、ボルツマン分布は、hνの励起エネルギーを持つエネルギー準位に分布している分子の割合を示し、kETはその十分な励起エネルギーを持った分子の運動エネルギーから振動エネルギーへのエネルギー移動の速度定数(kT-V)と、ある振動モードから別の振動モードへのエネルギー移動の速度定数(kV-V)の和を意味している。

 

kET = kT-V + kV-V

 

また、モード1個あたりの振動子がもつ平均エネルギーを次式であらわすと、

 

Eos = hν / { exp( hν / kBT ) - 1 }


となる。これは光子1個のエネルギー(hν)に、ボース・アインシュタインの分布関数をかけたものである。これを代入すると、最終的に次の関係式が導かれる。


8πν2 / c3 ・Eos = A / (A + knr) ・I(ν,T) + kET / (A + knr) ・8πhν2 / c3 ・Eos



さらに、黒体放射強度を次式のプランクの式を用いてあらわすと、

 

E(ν,T) = 8πν2 / c3 ・Eos

 

となる。これは、1個のモードあたりの平均エネルギー(Eos)に、単位振動数、単位体積あたりのモード数をかけたものに相当する。これを代入すると、

 

E(ν,T) = A / (A + knr) ・I(ν,T) + kET / (A + knr) ・E(ν,T)

 

となる。これを定性的に理解するために、放射、無放射の各収率を次のように定義し、


Φr = kr / (kr + knr) = A / (A + knr)

 

Φnr = knr / (kr + knr) ~ kET / (A + knr)

 

これを代入すると、


E(ν,T) = Φr ・I(ν,T) + Φnr ・E(ν,T)

 

となり、実際の気体分子のように、無放射緩和過程の寄与がある場合のプランクの黒体放射エネルギーの内訳を明確にすることができるようになった。


ここで、左辺はある振動数成分における完全な黒体放射エネルギーを表している。一方、右辺第一項は実際に観測することができる正味の放射エネルギー、右辺第二項は分子間衝突に誘起された無放射エネルギー移動に消費されるエネルギーの割合を示している。CO2の振動励起状態のように、放射緩和過程の量子収率(Φr)が小さければ、黒体放射であらわされるエネルギーの大部分は必然的に無放射緩和に分配されていることになる。

 

また、上式に、場に入射される放射強度I(ν,T')として黒体放射E(ν,T)を考えるならば、

 

E(ν,T) = (Φr  + Φnr )・ E(ν,T)

  
となり、放射と無放射緩和過程の収率の和が1となることが示される(*)。プランクの放射式は無放射緩和過程の寄与が無視できる場合にのみ当てはまるが、実際には黒体のような理想的な分子は存在しない。

 

もう一つの黒体の条件

もう一つ黒体の条件として、入射された放射をすべて吸収する物質でなければならないというものがある。つまり、あらゆる振動数の振動子をもつことが黒体放射の前提条件の一つとなっている。現実の物体では完全な黒体を作ることはできないため、空洞などを用いて黒体放射の検証が行われている。また、気体分子は基本的に線スペクトルであり、黒体とはかなりかけ離れた存在であるために、分子論的なアプローチなどが必要となってくる。


固体の場合、バンド構造のように電子のエネルギー準位を連続的な分布として取り扱うことができるため、様々な振動数の吸収・放射を行うことができる。また、太陽放射のような連続スペクトルの場合は、分子運動などにより十分にスペクトルが密になった状態の結果であり、実際には様々な量子状態をもった個々の分子の線スペクトルの重なりによって形成されているものと考えられる。

 

* 場に入射する放射強度I(ν,T')として地球放射を想定するならば、地球放射の吸収による大気温の上昇過程として記述することもできる(今回は大気がもつ温度からの仮想的な黒体放射を想定しており、温度一定のもとでの定常解を求めた)。地球放射を想定した場合、今回のような定常解ではなく、外部からの摂動を受けた非平衡状態からの緩和過程として記述する必要があるだろう。



各高度における放射収率

前回、「CO2による「再放射」の量子収率」というエントリーで、一気圧の大気圧条件下におけるCO2による「再放射」の量子収率が極めて小さなものであることを示した。それでは、どのくらいの高度になれば、伝熱過程としてCO2による放射過程が支配的になるかを大雑把に見積もることにした。まず、単位気圧あたりのCO2の無放射緩和速度(knr')は 8.38 × 104 (s-1 atm-1)とし、大気の組成に関係なく大気圧のみに比例し、また、無放射速度の気圧依存性は線形であると仮定した。すると、放射の量子収率は近似的に気圧(P)の関数として表すことができる。


 Φr=  kr / ( kr + knr' ×P)



したがって、各放射の量子収率における気圧は、



P(atm) =  ( kr / knr' )×(1 - Φr ) / Φr 


P(atm) =  ( 2.38× 102/ 8.38 × 10 )×(1 - Φr ) / Φr 



P(atm) = 0.00284×(1 - Φr ) / Φr


となる。上式を用いてCO2による放射の量子収率の大気圧依存性を表にまとめた。各気圧における高度の値は理科年表(2001年)を参照した。気圧に対応した高度がない場合は、その気圧に近い値を参考にし適当な値を代入した。



表-1 CO2の放射収率の気圧依存性

放射収率 (%)

気圧 (atm)

高度* (km)

1

2.8×10-1

9

5

5.4×10-2

20

10

2.6×10-2

25

30

6.6×10-3

34

50

2.8×10-3

40

70

1.2×10-3

46

90

3.2×10-4

57

99

2.9×10-5

 74

*  高度の値: 国立天文台編 『理科年表』 (2001年)、p387


また、上記の計算に基づきCO2による放射の量子収率と高度の関係を図に示した。 yield-pressure
この図によると、高度10kmまでに相当する気圧下の放射収率は非常に小さいことがわかる。そして、高度40kmぐらいの気圧が変曲点となり、さらに高度80km以上の気圧になると、分子間衝突による脱励起の影響をほとんど受けない領域であるということを示している。伝熱過程は放射、伝導、対流などがあるが、高度11kmまでは対流圏と呼び、対流が重要な伝熱過程として働き、水蒸気による潜熱輸送なども活発に行われ大気のダイナミクスを形成している。

 

注: 実際の放射の量子収率の値は分子間衝突だけではなく、分子内のモードへのエネルギー移動による再分配過程などもあり、極低圧下においても放射の量子収率が1になることはおそらくないだろう。その他にも気圧だけでなく、温度など様々な要因を考慮する必要があり、あくまで参考程度の値と考えてもらいたい。大気は乾燥大気を仮定しており、水蒸気などがある場合は、水蒸気へのエネルギー移動を考慮する必要がある。また、無放射緩和速度を気圧に線形に比例すると仮定していることも考慮する必要がある。


theme : 一般気象学
genre : 学問・文化・芸術

comment

Secret

 赤外分光「放射」スペクトルというのは別途測定されることはありませんが吸収スペクトルと同一のグラフですね。
 一種類のガスの赤外分光吸収スペクトルを見ると、個別の線スペクトルは一つ一つの分子内の振動モードに対応しているでしょう、わずかな幅の広がりは分子の移動速度ベクトルの向きのばらつきによるドップラー効果によるものでしょう。

 どこか一つの線スペクトルが空中を通過する赤外線を吸収し、励起されますが、そのエネルギーは他の振動モードや他の分子との衝突で消散されていくように見えるでしょう。

 でも、逆向きの動き、大気から他の分子の運動エネルギーが温室効果ガスに伝えられ、複数の振動モードで赤外線を放射させるというプロセスは統計的に常に起こっています。
つまりそれぞれの線スペクトルはエネルギーの入り口でもあり出口でもある窓だ、と考えられます。

 その窓にマックスウェルの悪魔が待ち構えていれば、検討されている懸念が起こるかもしれませんが、「マックスウェルの悪魔はいない」というのが経験則です。

系の揺らぎとしての局所熱力学平衡

仰るとおりで、励起状態の生成・脱励起過程は絶えず起こっていることです。運動エネルギーによる励起・脱励起過程は、正味のエネルギー変化を引き起こすことはありませんが、エントロピーを増大させる方向に働きます。


重要なのは、その励起・脱励起のサイクルがあることによって、吸収した赤外光を運動エネルギーへと変換しているということです。それは、より低エネルギー状態にある運動エネルギーへの再分配過程として記述されます。つまり、無放射緩和過程とは、動的平衡によって引き起こされるエネルギーの散逸過程に他なりません。


ここでは余り強調しなかったので見過ごされてしまったかもしれませんが、分子衝突による励起・脱励起の速度定数を与えたことが、今回の無放射緩和過程の寄与を考える上で重要な鍵となっています。

 実際に今回の検討で何を主張されようとしているのかという結論がよく分かりませんが、代わりに書いてみますと、成層圏(高度10~50km)にあるCO2は比較的量子収率が良く、つまり吸収をして他の分子にエネルギーを渡す前に再放射をすることで温室効果ガスとしての機能を果たしている、という主張になるでしょうか。

 成層圏では水蒸気はほとんど存在しない(はるか下の対流圏上部で固化、落下してしまう)ので、水蒸気についてはこの意味の再放射の温室効果はない、ということも主張されるおつもりでしょうか?

 >つまり、無放射緩和過程とは、動的平衡によって引き起こされるエネルギーの散逸過程に他なりません。

とのことですが、ここで仮想的な断熱壁に囲まれたある体積のガスを考えた場合、ガスの中のエネルギーは散逸することでやがてガスの温度は絶対温度0に落ち込んでいくのでしょうか?違いますよね。

 比較的運動エネルギーの大きな分子は統計的な比率で定常的に同じだけ存在し、温室効果ガスがその運動エネルギーの大きな状態になったときに、ある線スペクトルでhvのエネルギーの放射をすることになります。

 断熱壁=あらゆる波長の光についての完全反射体と考えられますから、放射された赤外線は壁のところで反射され、ガスと同じ空間をある密度で満たすことになります。

 仮に単色のふく射率>単色の吸収率といった関係があれば、同じ空間を占める赤外線の密度が無限に増加していって、その波長1/vよりも高いエネルギーのガスが存在しなくなるまでガスの温度は下がり続けることになります。
 単色のふく射率<単色の吸収率であれば、その空間に赤外線の形でのエネルギーは存在しなく?なります。

 結果としてこの熱平衡状態に限定して言えば、温室効果ガスによる赤外線の放射量と吸収量は完全に一致することになるはずですね。ガス分子の温度と赤外線の密度はある一定の比率を保って定常化しているわけです。

 この状態のガスに対して、一瞬だけ断熱壁が開いて外部から赤外線が入った場合を想定してみてはどうでしょうか。

対流圏大気圧下における無放射緩和過程の寄与

アインシュタインのA係数(自然放射の速度定数)とアインシュタインのB係数(誘導吸収の速度定数)が比例関係にあることは、自明のものとして本文の中でも示しました。


A= ( 8πhν^3 / c^3 )・B


また、放射係数(ε)と吸収係数(κ)は、それぞれ、アインシュタインのA係数とB係数に比例します。つまり、放射係数(ε)と吸収係数(κ)の比が一定というキルヒホッフの法則は、アインシュタインの関係式を用いて表すことができます。


ε/κ ∝ A/B = const.


これはB係数が大きいほど、A係数も大きくなるということです。言い換えると、光を吸収しやすいほど、光を放出しやすいと言うことでもあります。しかし、これは実際に観測される放射の量子収率について述べたものではありません。つまり、自然放射の速度定数(A係数)やB係数が大きいからといって、放射の量子収率も大きくなるとは限らないのです。


これは、アインシュタインの関係式やキルヒホッフの法則が、基本的に光のやり取りだけの相互作用を考えているためであり、実際には分子衝突に誘起された無放射緩和過程による並進運動エネルギーなどへの分配過程を考慮する必要があります。


実際の振動励起分子は分子衝突による無放射緩和過程などによっても基底状態へと失活します。つまり、放射の量子収率(Φr)は、無放射緩和過程の速度定数(knr)が自然放射の速度定数(A係数)に比べて著しく大きい場合、無放射緩和過程の寄与を無視することはできなくなります。


Φr = A / (A + knr)


CO2の変角振動励起状態の場合、無放射緩和の速度定数は気圧に大きく依存するものと考えられます。今回の後半のエントリー(各高度における放射収率)で概算したように、対流圏大気圧下において無放射緩和過程の寄与を無視することは非常に難しいのではないかと考えられます。


一方、成層圏などでは、気圧が希薄なため「放射」による緩和過程が高度の上昇とともに徐々に支配的になるものと考えられます。しかし、高層大気において、CO2は宇宙へ射出を行うことで、赤外放射冷却としての働きも考慮する必要があるのではないかと思います。

 赤外線を吸収して励起された分子の再放射時の量子効率が通常の対流圏では極めて低いということは何を意味するのか?ですが。

 単に放射も、吸収も熱平衡状態で行われているということを意味しているのにすぎないように思います。

 だから再放射などというものはないのだ、と主張したいのかもしれませんが、再放射はなくても通常の熱ふく射は地表向きのものが半分あるので、Back Radiationという表現でおかしくないのだと思います。

分子衝突による無放射的な励起・脱励起のサイクルが引き起こす動的平衡

励起過程には光励起と衝突励起の二通りの経路がありますが、いずれの励起状態も区別なく分子衝突の影響を受けて無放射的に失活する可能性が非常に高いと思います。


今回のエントリーで示したように、熱平衡下(衝突による励起・脱励起の動的平衡)において放射・無放射緩和は定常的に起こっていることですが、励起経路によらずCO2の励起状態の失活過程は、対流圏大気圧下において無放射緩和過程が支配的であるということに変わりはないと思います。

TheorySurgeryさん。

 つまり、再放射というのは統計的にはほとんどなく、熱平衡状態のガスとしての放射が出るだけ、というのに同意しますが。

>SGWさん、こんにちは。
「輻射」という言葉は、最近では余り用いられなくなってきたので、私は「放射」と表記しています。また「再放射」という言葉については、地球のエネルギー収支の説明などで多用されており、それを強調したいときに用いています。たとえば、下記のサイトの図を見ると、「再放射(back radiation)」が、あたかも地表を暖めているかのような表記がなされております。

TheorySurgeryさんのここの説明の、再放射(back radiation)はたんなる温室効果ガスの「放射の下方向成分」と読み代えるのがよろしいかと。

んで、ガスによる放射の等方性という性質だけから、温室効果による地表面の昇温が成立します。

浴室床の冷たいタイルとヒートショック

大気中のCO2は約400ppmですから、割合にして大気分子1万個のうちの4個分に相当します。その4個のうちの1個にも満たない分子がぽつんぽつんと蛍の光のように赤外発光をしたとして、その発光が与える地表の昇温に対する寄与は僅かなものだと思います。


たとえば、ここで、冬場のお風呂を想定します。まず、浴槽のフタをとりますと、湯気がもくもくと昇り、水蒸気が浴室に充満します。しかし、「温室効果ガス」である水蒸気が浴室内を充満しても、浴室の床のタイルは非常に冷たいまま、なかなか容易には温まりません(これは湯船につかりながらでも、試してもらえればと思います)。


この冷たい床と湯船の温度差は人にヒートショックをもたらし、心筋梗塞や脳血管障害などにつながる恐れがあります。ヒートショック対策としては、浴室の床や壁にお湯かけるなどの手間が必要ですが、次のような工夫をしている人もいるようです。
http://members.jcom.home.ne.jp/works-mz/mizoguchi/bathroom/bathroom.html

冬場のお風呂場では、わずかな空間からの赤外ふく射は量が少ないと思われます。
比率で言えば、むしろ水蒸気自体が床に接触して液化する際にでる凝縮熱の方が床に多くの熱を伝えられるはずです。
>浴室の床のタイルは非常に冷たいまま、なかなか容易には温まりません。
その通りでしょうが、そのことからは水蒸気が凝縮熱をもたないという結論が導き出せるわけではないように思います。

光学的厚さ(光学密度)

>わずかな空間からの赤外ふく射


浴室は閉じた空間であるがゆえに、水蒸気も飽和しやすい条件になっています。そのため、「温室効果ガス」である水蒸気による光学的厚さ(光学密度)は浴室という限られた空間内においてもすでに十分な値に達しているものと考えられます。それでは、ためしに水蒸気の変角振動(1596cm^-1)における光学的厚さを大雑把にですが見積もってみることにしましょう。


まず、水蒸気の変角振動における吸収断面積はおよそ48m^2/mol(8×10^-19cm^2/molecule)程度となります(参考:http://vpl.ipac.caltech.edu/spectra/h2o.htm)。
また、浴室内の水蒸気量は飽和していると仮定しますと、飽和水蒸気圧は23.38hPa(20℃)になります(参考:http://www.s-yamaga.jp/nanimono/taikitoumi/kukichunosuijoki.htm)。
さらに、浴室の高さを2mと仮定しますと、光学的厚さに対して次のように式をたてることができます。


光学的厚さ = 吸収断面積×濃度×光路長

=(48m^2/mol)×(23.38/1013)/(22.4×10^-3m^3/mol)×(2m)

≒98.9


このような大きな値が得られたことから、浴室内の空間でも十分な光学的厚さを有することができることがわかります。つまり、空間の大小だけでは光学的厚さを決定することはできません。たとえば、乾燥した大気ならば、水蒸気による光学的厚さは余り大きな値をとることはできないのではないかと考えられます。

 最後の一文は意味不明なのですが、それはおいておいて。

 比ゆが適切に理解されていないようですが、冷たい床の上にある水蒸気は、すぐに冷ふく射で冷えてしまうでしょう。床のような大きな熱容量を持つものを暖めるには、水蒸気からのふく射も水蒸気の凝縮も共に力不足だということです。

放射による直接的な昇温の可能性

下層大気において放射伝熱は余り重要ではないという主張であるならば、そのとおりだと思います。一般的な放射平衡に基づく温暖化の説明には「地球放射を吸収した温室効果ガスによる再放射が地表を温める」とされています。たとえば、水蒸気の変角振動モードによる光学的厚さが10を超えるほどの十分に大きな値を示す場合、その波長における赤外吸収率はほぼ100%となります。放射平衡の説明が正しければ、この水蒸気の再放射による地表の昇温効果が期待できるはずです。


一方、SGWさんは過去のコメントで「再放射というのは統計的にはほとんどなく、熱平衡状態のガスとしての放射が出るだけ、というのに同意し」、「ガスによる放射の等方性という性質だけから、温室効果による地表面の昇温が成立します」とあります。この過去のコメントに「ただし、放射による直接的な地表への昇温効果は非常に小さい」というニュアンスが含まれるのであれば、今回のSGWさんのコメントとの整合性がとれるのかもしれないなと思いました。

加熱について

基本的な物理現象について2点お伺いしたいのですが、①温度が低い分子から放出される赤外線によって、温度が高い分子が加熱されることなどありえるのですか?
②地球での乾燥した大気・陸地・無風状態を前提にして、地表1mの気温が10℃の場合、高度1000mに漂っている気体分子の温度は、ボイル・シャルルの法則により地表面よりも低下していると思います。この高度1000mに漂っている気体分子が、地表面から放出された赤外線を吸収した後に、地表面に向かって放出する赤外線が、地表面を漂っている10℃の気体分子を加熱する現象は起こるりうるのですか?

温度はマクロな統計量

スパイラルドラゴンさん、こんにちは。
①温度はマクロな指標であり、基本的に分子集団などの運動エネルギーの平均値であらわされるものです。つまり、ある分子固有の状態を取り出して温度を決定することはできないと思います。ある一つの温度であっても、速く動く分子もあれば、ゆっくりと動く分子もあり、それらの分子は衝突などによってエネルギーのやり取りも行っています。温度はそれらエネルギーの分布で表され、各分子のエネルギーの値は時間的に絶えず揺らいでいます。


②また、私は「対流圏大気圧下において振動励起状態にある赤外活性分子は主に無放射的に失活する」と考えています。いずれにせよ、振動励起エネルギーは最終的に窒素や酸素の並進運動エネルギーへと分配される確率が高いと思います。大気は気体分子で構成されていますが、気体分子は非常に大きな運動エネルギーを持っています。


もし、太陽放射や地球放射に含まれる赤外励起エネルギーから窒素や酸素の運動エネルギーへの分配が行われなければ、大気は液体や固体状態となり、気体として存在することはできなくなります(窒素: 融点=-209.86℃、沸点=-195.79℃)(酸素:融点=−218.79℃、沸点=−182.96℃)(ここで、地表からの伝導などによる伝熱過程の寄与は無視して考えています)。液体窒素などは割と身近なところでも使われています(たとえば、液体ヘリウムの冷却のための医療用NMR(MRI)など)。


たとえば、火星の単位面積あたりのCO2は地球の約50倍ほどあります(http://feliscatus.blog77.fc2.com/blog-entry-68.html)。つまり、温室効果ガスとしての「光学的厚さ」は十分ですが、「大気の厚さ」が非常に薄いため、火星の平均気温は-43℃と極寒の惑星となっています。これは惑星の保温効果が大気量に強く依存していることを示唆しているものと考えられます(大気量が多ければ、それだけ大気の熱容量は大きくなります)。火星のように、いくらCO2が多くても、大気量が少なければ、金星のような顕著な昇温効果(保温効果)を見込むことはほとんどできないと思います。

気体の熱の伝わり方

TheorySurgeryさん、丁寧なご返答有り難うございました。
>温度はマクロな指標であり~
この点は、全く気付いていませんでした。
私の念頭にある「気体同士の伝熱」とは、「分子速度が速い高温の気体分子が、分子速度の遅い低温の気体分子に衝突し、速度が加わることで熱が伝わる 」ことであり、この逆の現象は起こりえないというものです。
そして、ある気体が放出する赤外線によって、遠く離れた他の気体が加熱されることなど、ありえない現象だと思っています。
地表面が放出する赤外線が「温室効果ガスの層」に反射して、地表面の気体を加熱するなどという「地球温暖化理論」などは、ハナから信じていません。ICPPの連中が、二酸化炭素を悪玉に仕立てた思惑も、当初から気付いていました。

②と、それ以降の説明には、深く同意します。

一つお願いなのですが、「地球温暖化メカニズム」の矛盾点を、他の自然現象や法則に例えた説明をアップして頂けないでしょうか。
 

>>ICPPの連中が、二酸化炭素を悪玉に仕立てた思惑も、当初から気付いていました。


ICPPではなくIPCCのことですね。確かにIPCCの設立(1988年)は1988年のハンセン証言と同期しており、そこに何らかの思惑を読み取ることも可能かもしれません(http://www.ipcc.ch/about/index.htm)。しかし、具体的な根拠を挙げずに、今から約20年も前に思惑を気づいていたという言い方をしてしまうと、陰謀論ととられかねない危うさがあると思います。


時系列から考えますと、1989年発行の「別冊宝島101・地球環境・読本」には、根本順吉さんが温暖化説に関する欺瞞を指摘しています。1992年には槌田敦さんの「環境保護運動はどこが間違っているのか?」や田中三彦さんの「空中鬼を討て」などが出版されています。これらの著者と同時期にスパイラルドラゴンさんも独自に調べていたということでしょうか。



>>「地球温暖化メカニズム」の矛盾点を、他の自然現象や法則に例えた説明をアップして頂けないでしょうか。


私にはまだ分かりやすく説明する才能がありません。もしスパラルドラゴンさんに良いアイデアがあれば参考にしたいくらいです。最近はとくに分かりづらい内容だというのは自覚していますから、間違いや気づいたことなど、なんでもおっしゃっていただけると、こちらも大変参考になります。

追伸

>>ICPPではなくIPCC

IPCCの表記をしょっちゅう間違えています。今後注意します。
また、私がいう所の当初とは、COP3京都会議が開催された時分のころです。その頃に自治体向けの独立型太陽光発電システムを販売していて、多少温暖化についても勉強していて、またCOP3京都会議の参加者の一部が、地球温暖化対策として原発を推進すべきだと主張していたので、これはとんでもないことになると予感したのです。
あと、解りやすい温暖化の説明は、「地球の正しい保温メカニズム」を丁寧に説明しながら、二酸化炭素の特性を織り交ぜれば良いと思います。

エントロピー論を踏まえた大気の温度勾配の安定性メカニズム

>>解りやすい温暖化の説明は、「地球の正しい保温メカニズム」を丁寧に説明しながら、二酸化炭素の特性を織り交ぜれば良いと思います。


私は私のやり方でブログを書いています。スパイラルドラゴンさんも何か専門分野や、あるいはこれまでの経験を生かした主張をすればそれでいいと思います。「地球の正しい保温メカニズム」については、近藤邦明さんによる解説がもっとも優れていると思います(下記URL参照)。


大気温度はどのように決まるか
http://env01.cool.ne.jp/global_warming/report/kondoh05.htm
二酸化炭素温暖化仮説とエントロピー
http://env01.cool.ne.jp/global_warming/report/buturigakkai/buturigakkai.htm


近藤さんの解説はエントロピー論をも踏まえており、これ以上の優れた解説は日本だけでなく、海外を見渡したとしても、ほとんど見つけることはできないと思います(あえて近い主張をあげるなら、ドイツのA. Rörschらによる「水の惑星の気候変化」などがありますが、今はネット上では見れなくなっているようです。
Climate Change on a Watery Planet. The CO2-Question Re-examined. A. Rörsch et al.,(2005)
http://feliscatus.web.fc2.com/estimate.html
The Interaction of Climate Change and the Carbon Dioxide Cycle
http://www.ingentaconnect.com/content/mscp/ene/2005/00000016/00000002/art00002)。もちろん私にも、これ以上の優れた解説を書くことはできません。
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社会科学と疑似科学の際どい境界線を探りながら、文系と理系の学問の乖離やらを考えています。分光学を視点として温暖化懐疑論も展開してます。

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