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太陽活動と気候の関係

IPCCの第四次報告書(AR4)では「不確かである」としてスベンスマルク効果をはじめ太陽放射における間接的効果を取り入れるまでにはいたっていない。確かに、定量的な見積もりは非常に難しいことかもしれないが、歴史を紐解けば太陽活動と気候の間に密接な関係を見出すことは比較的たやすい事ではないだろうか。


オーロラとナイル川の水位の相関
太陽活動の長期的な影響を調べるために、中世の時代に残されていたナイル川の水位の記録とオーロラの数の記録を比較したという研究がある。
(太陽が気候を長期的に影響 - 賛同する科学が崩れ始める


これは西暦622年から1470年の間の記録を調べたものだ。期間としては850年にもの長期にわたる記録である。それによると、200年周期と88年周期の変動が一致したとある。オーロラと連動した水位の変化は、太陽の紫外線エネルギーの変化が北半球環状モード(Northern Annular Mode)を引き起こしたのではないかとされている。北半球環状モードは北極振動の別の呼び方のようだ。


オーロラは太陽風と呼ばれるプラズマ粒子(主に、太陽の水素を起源としたプロトンと電子)と大気の衝突による発光現象だが、同時に紫外線の量も同期して増えていると考えればよいのだろうか。確かに、太陽活動の変動は、可視光領域における変動は非常に小さいが、一方で、紫外線などの短波長領域になるほど変動が大きいとも言われている。


とにかく、この研究からは、太陽活動(とくに紫外線)が気候に及ぼす影響が無視できないほど大きいかもしれないということだろう。太陽から放出される真空紫外線は高層大気と反応し、オゾン生成反応のように様々な光化学反応を引き起こすことはよく知られていることだ。


放射平衡論では、地表と可視光の相互作用を起点としてモデルを組み立てているように思う。しかし、実際の大気は紫外線や宇宙線などと活発に光分解反応などが起きており、成層圏大気が対流圏に及ぼす影響も無視できないように思う。


「不確かなもの」の中に潜む気候変動の鍵
スベンスマルク以外の研究チームによっても太陽の変動と雲量の関係は調べられている。AR4を見ると、太陽の変動と雲量に関係があるものとして、以下に示す四つの因子が挙げられている。
(2 Changes in Atmospheric Constituents and in Radiative Forcing )(各論文のAbstractから一部抜粋。)


・ 「太陽圏において太陽活動に変調された宇宙線フラックスの変化」
(Usoskin et al., 2004)

『This latitudinal dependence gives strong support for the hypothesis that the cosmic ray induced ionization modulates cloud properties.』



・ 「太陽に誘起されたオゾンの変化」
(Udelhofen and Cess, 2001)

『Results of spectral analyses reveal a statistically significant cloud cover signal at the period of 11 years; the coherence between cloud cover and solar variability proxy is 0.7 and statistically significant with 95% confidence.』


『Our results suggest that cloud variabilities may be affected by a modulation of the atmospheric circulation resulting from variations of the solar-UV-ozone-induced heating of the atmosphere.』



・ 「総日射照度の変化」
(Kristjánsson et al., 2002)

『 It is found that solar irradiance correlates better and more consistently with low cloud cover than cosmic ray flux does.』



・ 「エルニーニョ南方振動(ENSO)による内部変動」
(Kernthaler et al., 1999)

『 Thin high cloud shows an increase throughout the period such that the combined effect of the changes in cloud types suggests an almost monotonic increase in cloud radiative forcing between 1985 and 1988 which is not related to cosmic ray activity. 』



宇宙線と雲の関係はスベンスマルク効果で有名だが、それ以外にも雲の形成に関してオゾンの変化の寄与など様々な説が唱えられているようだ。下の二つの因子は雲の形成における宇宙線の影響は小さいとして、代わりに海表面温度に直接的な変化を与えるものとして取り上げられている。エルニーニョに関しては次のような話もある。たとえば、熱塩循環は潮汐や風のエネルギーが駆動力として働いていると考えられていて、そこからエルニーニョも月の潮汐力の変化によって引き起こされているのではないかと唱える学者もいるみたいだ。(The Moon and El Niño


考えてみれば当然のことかもしれないが、潮の満ち引きは月と太陽の摂動によるものだ。海洋を揺り動かしている力は、月と風の力によるところが非常に大きいのではないだろうか。他にも太陽活動と北極振動(AO)や成層圏準2年周期振動(QBO)などのテレコネクション(遠隔相関) との相関も指摘されている。
(太陽と気候 永井俊哉)(テレコネクション wikipedia)


仮に、北極振動の励起因子は太陽活動であり、南方振動(エルニーニョ)の励起因子は月の潮汐力だとしよう。これは私の想像だが、陸地が多い北半球は太陽活動の影響を受けやすく、海洋の多い南半球は月の潮汐力の影響を受けやすいということだろうか。今後の研究の進展に期待したいところだが、これらIPCCによって「不確か」とされたものの中には、これまで異常気象と呼ばれていた自然現象(自然のダイナミクス)の解明の鍵となる研究が隠されているのかもしれない。


ところで、日本の太陽観測衛星「ひので」の観測データが公開されることになったようだ(国立天文台 ひので ホームページ)。これから太陽活動に対する新しい知見も徐々に得られるようになるだろう。自然科学は自然を観測することから始まる。まだまだ人間は自然についてほとんど何も知らないのかもしれない。極域で先駆的な研究を行ってきたアラスカ大学の赤祖父俊一さんも「現地での観測・研究、まだ不十分」という。次に少しだけ引用しよう。もちろん、IPCCに対して苦言を呈することも忘れてはいない。


「地球温暖化と北極圏における環境変動」

その間氷期中にも小氷河期(1400年―1800年)があり、地球はその氷河期から回復中でもある。現在これらの氷河期の原因はまだ不明である。



Why has “global warming” become such a passionate subject?
– Let’s not lose our cool –

『The media in the world is paying great attention mostly to the term “very likely,” meaning the confidence level of more than 90%. However, I, as a scientist, am more concerned about the term “most,” because the IPCC Report does not demonstrate the basis for the term “most.”』


『Further, the IPCC models cannot reproduce the prominent continental warming, in spite of the fact that the measured amount of CO2 was considered. This particular warming is likely to be part of multi-decadal oscillations, a natural cause.



自然界には周期的な変動が存在する。昔はそれを異常気象などと呼んでいたが、ここ最近の研究により、それが数十年振動(multi-decadal oscillations)という自然現象であることが明らかになりつつあるようだ。


自然科学が「人為」ではなく、本来の「自然」を対象にした科学としての原点に立ち返るときがきているのかも知れない。パソコンに噛り付いている研究者よりもそこいらの百姓の方がよっぽど自然というものを理解しているのではないだろうか。いまや世界の穀物はアメリカとカナダの穀物メジャーからの供給なくしては立ち行かないのが現状だ。農業後進国である日本はこれからどんな文明を築こうとしているのだろうか。


古来、農耕文明の発展に伴い天体活動と気候の関係が調べられるようになり、やがて暦が生まれ、いつしか占星術から天文学にまで発展した。しかし、現代社会はまた怪しい未来予測をする占師が活躍する時代に後戻りしつつあるのかもしれない。そんな中でも、天文学と気候学は結びつきを深め、自然のダイナミクスを解き明かす鍵となるであろう。ようやく占星術師の仕事にも科学のメスが入る、そんな時代がやってきたのかもしれない。


人類は寒冷化で滅びはしても、温暖化で滅びはしないだろう。日の本の国、そして、稲穂の国が、太陽と穀物から目を背けていてはお天道様になんと申し訳をしたらよいのだろうか。エジプト神話のセクメトは太陽神ラーを崇めない人間を殺戮するために地上に送られたという。神話に登場する残酷な神々は天からの警告を次の世代に伝えようとしているのかもしれない。


参考図書
伊藤公紀「地球温暖化―埋まってきたジグソーパズル」

theme : 環境問題
genre : 学問・文化・芸術

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潮汐力潮汐力 (tidal force) は重力によって起こる二次的効果の一種であり、潮汐の原因である。潮汐力は物体に働く重力場が一定でなく、物体表面あるいは内部の場所ごとに異なっているために起こる。ある物体が別の物体から重力の作用を受ける時、その重力加速度は、重力源

宇宙宇宙(うちゅう)とは、広義では森羅万象(あらゆる物事)を含む天地の全体、世界()の意味と、哲学・宗教あるいは何らかの観点から見て、秩序をもつ完結した世界体系、コスモス()の意味を持つ。また、狭義では天文学的、物理学的にみた宇宙と、地球の大気圏外の空間 、

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赤祖父氏の近況

こんにちは、はれほれです。
赤祖父氏はIARCを退官されたのか、日本で国会議員さんを相手に講演されているようです。がんばってほしいものです。
http://j-yamamoto.cocolog-nifty.com/hokoku/2007/05/co2_f552.html

現場軽視の風潮

はれほれさん、こんにちは。
赤祖父さんについては最近知ったのですが、実際に極域で観測することの重要性をどれだけのモデル計算者が分かっているのでしょうかね。


なぜ、自然観測を軽視した風潮が蔓延しているのか不思議ですが、現場の声の大事さは何も自然科学だけには限らないようにも思います。赤祖父さんについては、もっと世間の人に知ってもらいたいところです。

もっと観測に力を

>実際に極域で観測することの重要性をどれだけのモデル計算者が分かっているのでしょうかね

私もそう思います。地球シミュレーターなどにお金をかけずに、もっと観測に力と資金をつぎ込むべきと思います。(スーパ-)カミオカンデも最初は壮大なムダかと私も思ったのですが結果的にはノーベル賞に結びつきましたしね。予測結果がゴミになることはあっても観測結果は必ず役に立ちます。
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