虚構の思想の知識人・中沢新一
相対主義によりフィクション化した思想テレビ・ドラマの最後には、次のようなお馴染みのテロップが表示される。
「この番組はフィクションです。登場する団体、人物等は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。 」
作家のジャンルには、ノンフィクション作家というものがある。一方、哲学や思想の世界では、だいぶフィクション化(小説化)が進んでいたようだ。例えば、浅田彰は、オウム事件に関連して、中沢新一を擁護するために、次のように発言している。
『蓮實重彦が、『チベットのモーツァルト』は小説なんだから実証性や論理的一貫性を求めるのは間違っている、と言ったことがあるけれど、僕もそう思います』
そんなポストモダンな思想家の中沢新一に対して、宮崎哲弥はこう評している。
『中沢はポストモダニズムの人らしく、全ての言説は表層の戯れに過ぎないと捉える。この世には、善と悪の、真と偽の本質的区別はない。あるいは仮にそうした分別があっても、二者の「中間」の領野にあって、ユーモアを湛え、遊び笑うことこそが知の「倫理的な」あり様であると、そう考えている。
だから、中沢の書く学問的厳密さや堅苦しい道徳性など薬にしたくともなく、実証性も倫理一貫性もいらないわけである。こんなものは、際限なきエゴイズムの発言を許すだけの倫理である。』『事実関係の真偽や道徳的善悪や倫理整合性の有無は眼中に入れない』宮崎哲弥(『宝島30』 その後のオウム真理教)
次の『諸君!』紙上での浅田と中沢のやり取りは、彼らの言論の軽さや無責任体質といったものよく表している。
『浅田 中沢さんでさえ、この現実と違う世界をエキゾチックに描き出して若者たちを誘惑したとは思わない。一見そのように読める部分でも、それは本当はユーモアをもって書かれていて、『よくこんなこと言うぜ』と言って笑いながら読めるようになっている(笑)。そんなこともわからないやつは、単なる馬鹿でしょう。(中略)
中沢 笑いのために書かれた本が生真面目によって誤読されてしまう不幸はドンキホーテの昔から、防ぎようのないことです』
(『諸君!』八月号対談「オウムとは何だったのか」)
小浜逸郎は、中沢新一に対して、次のような意味のことを述べている。
『中沢新一の思想は、「身体の変容によって、もう先の見えたこの近代的な現実システムを超越して、もうひとつの現実に飛翔しなさい。」というものだ。
「主体と対象の超えがたい距離によって区画づけられ、言語によってくまなく支配されたこのソリッドな世界だけが世界なのではない。そのような区別や意味が生起しはじめる起源の不定形な世界に人はたちもどり感応することができるのだ」と。
「言語」を超え、「身体」を媒介として「身体」を「浄土」の肉体と合一させることを目指す思想が単なるレトリックではなく、「身体的」たろうとするならば?ヨガ、修行、薬物、(科学技術の名を借りた)マジック…。ほんとうにオウムの世界まであと一歩だ。それらは日常性を回避するロマンシズムであり、生活や日常倫理と地続きの問題への配慮をそっくり欠落させてしまう。』(『宝島30』 その後のオウム真理教)
中沢・島田批判 オウムに関する発言をめぐって
中沢新一「レーニン礼賛」の驚くべき虚構
東浩紀
大月隆寛は、「浅田彰の再来」とも言われた東浩紀に対してこう述べている。
『おたく的なデタッチメント、価値相対主義的な距離感で全てを「ネタ」として見てゆくような態度や視線は、感情を平然とむき出しにしているようなナマモノの相手に対しては有効でない、というこの認識は、「冷静」で「論理的」であることを一義的に価値とするような偏差値優等生が抱え込んでいるある種のおびえ、強迫観念といったものに通じるように感じます。
「冷静」で「論理的」であることをモビルスーツにして全てを超越的に把握してゆける、と思い込んだのが、宮台真司などに典型的な、しかし旧来の知識人の自意識(突出した「個」、世俗を超越した「知性」)と見事なまでに連なる昨今のインテリワナビーのストレートな精神構造だとしたら、これはその裏返しに、「怒る」「感情的である」ことに敢えて価値を見出してみせる(ふりをする)ことで、そのようなインテリワナビーな自分を「そんなことはわかているよ」(by 大塚英志)とばかりに相対化して正当化してみせる、ちと手の込んだ、ひねくれた手口です。』

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小説が気になったぞ|2007/03/30 09:03
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