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疑似科学化した社会科学の危機感

疑似科学者の傾向

懐疑論者のマーティン・ガードナーは、疑似科学者の傾向として五項目を挙げている。

・自分を天才だと考えている。
・仲間たちを例外なく無知な大馬鹿者と考えている。
・自分は不当にも迫害され差別されていると考えている。
・もっとも偉大な科学者や、もっとも確立されている理論に攻撃の的を絞りたいという強迫観念がある。
・複雑な専門用語を使って書く傾向がよく見られ、多くの場合、自分が勝手に創った用語や表現を駆使している。



(疑似科学-wikipedia)


この擬似科学者の項目を見ていると、ポストモダンの哲学者たちがおかした過ちは、最後の項目にぴたりと当てはまるだろう。難解な用語を好んで用いるポストモダンの哲学者には、「オッカムの剃刀」と言う言葉を教えてあげるといいだろう。


ポストモダンの哲学による科学用語の誤用と濫用は、アラン・ソーカルが指摘し批判している。これは、後にソーカル事件とも呼ばれるようになった。(文系学問における疑似科学批判と言えば、カール・ポパーが有名だが、最近だと、ロジャー・G・ニュートンが、啓蒙主義者とロマン主義者による科学の混乱を指摘している。『科学が正しい理由』


ニセ科学が受け入れられる土壌
「ニセ科学入門」というホームページでは、ニセ科学が受け入れられる理由として「科学らしさ」に加えて、「願望充足」を挙げている。「願望充足」の例としては、子供にゲームのし過ぎを注意したい親御さんが「ゲーム脳」に賛同したり、小学校の道徳教材として「水からの伝言」を用いる例が当てはまるだろう。科学の受けての方にも、疑似科学をのさばらせてしまう土壌があるようだ。


特に、「ダイエット」とか「美容」のことになると、女性は盲目になってしまう傾向が強いのだろう。ただ、難しいのは、科学ではないが、宗教などは、まさに「願望充足」との親和性が極めて強いし、「占い」や「スピリチュアル」などを含めると非常に微妙な問題をはらんでいる。あれは一つの信仰のあり方と言われれば、他の宗教と同じく認めざるをえないだろう。ただ、カルトに対する警戒は疑似科学と同じく怠ってはならないことだ。
(ニセ科学入門)


社会科学における学問としての危機意識

今日では、社会科学は様々な批判を浴びており、その現状に対して危機感を抱く人は少なからずいるようだ。そこで、少しだけネットで見つけた例だが、そこから引用させてもらおう。


『疑似科学は上で挙げたような「怪しい」分野のみならず、大学で研究されている「れっきとした」学問の中にもはびこっている事がたびたび指摘されており、哲学者や文芸評論家、文芸理論家などが自分の説を権威づけるために(専門家から見れば)デタラメな科学的知識を並べたてているのが散見される。』

文科系の学問における疑似科学


『物理学者ソーカルによって、ポストモダンを標榜する者たちが、衒学的であり(読者が解らないことをいいことにデタラメな数式で根拠づけており)、相対主義である、として非難された事件である(ソーカル事件参照)。"ポストモダン"評論家の数式を装ったまやかしの記法を指摘したソーカルの指摘は正しく、ポストモダンの評論家からはソーカルに反論する者すら出てこなかった。結局、"ポストモダン"に関わっている者がしていることは、ある種のまやかしの活動であり、学問に大切な誠実さが根本的に無い、』

ポストモダン - Wikipedia


『ポストモダン思想は、古典的な絶対的「正しさ」の観念を相対化し、現代社会の「内的な自由」の精神の核心をよく表現したという点で、きわめて大きな存在意義をもっていた。しかし、われわれはいま、それが現代の批判思想として挫折している本質的な理由をよく理解する必要がある。その多様な側面をさまざまにつなぎ合わせて何か新しい思想を生み出せるかも知れないと考える人も多いが、それは空しい錬金術にすぎない。』

ポストモダン思想は終わったのか?


『人文系と分類されている学界では、まだ理論と人名の分断がなされておらず、その論文が理論的説得ではなく、権威的説得に頼ろうとしている風潮が高いように感じられます。しかしながら、背後にある伝統的システムを健全なものとみなし、そこから生産された権威の提示を強調することは、理論的貧困性を招来するのではないかと危惧します。』


幽霊の哲学


『(東大を初めとした理論系社会学の)それらの大学では、教員の多くが理論の輸入や解釈を主目的としているため、新しい知見の発見は困難である。そのため国際学会での発表経験が乏しいか、発表能力がほとんどない教員も多い。このような深刻な事態の背景には、かつて日本の大学に予算や調査能力がなかった時代には、理論研究のみしかできなくても、やむをえなかったという事情もある。しかし今日では、現実社会と距離のある抽象的な理論社会学研究に対しては、かなりの社会的批判が存在するのも事実である。』

社会学-wikipedia


『精神分析は存亡の危機に瀕している。神経科学的な修繕を多少施したところで、どうにかなるものではない。仮に修繕するとしても、あまりにも修繕箇所が多すぎるので、多くの神経科学者は、それよりもむしろ、神経認知的なモデルをゼロから作り上げる方を好むだろう』


アラン・ホブソン著「夢の科学」 (新書)


『日本では、心理学が医学・生理学を含む他の理系分野と方法論的に協力・融合可能な学問であるという認識が、双方の研究者で低く、交流を妨げている。先ずは日本の実証的な心理学の位置づけを再検討し、他分野と協同し易い体制を整える事が必要である。』

3‐2.心理学は文学か?


社会科学の今後の展望
社会科学は、心理学や言語学などの分野では、脳科学などの協力により急速に科学らしさを取り戻している。では、他の分野の社会科学は余り科学的に厳密でないから重要でないかと言うと、事態はまったくの正反対だ。地球温暖化や資源配分の問題や貧困の問題など、グローバル化した現代社会においては、社会的・文化的な要請は非常に強いものがあり、社会科学の存在意義は将来ますます重要になると思われる。OECD(経済協力開発機構)のホームページにはこうある。


「暴力の増大,高齢化,民族間闘争,地球温暖化,これらの問題はしばしば誤解されている社会科学にその真価を実証する機会を提供している。しかし社会科学自身先ず変われるであろうか。」

社会科学を伴った将来へ

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疑似科学に踏み込む脳科学

脳科学と心理学
今、脳科学ではfMRIやPET,光トポグラフィーなどの強力なツールによって次々と新しい知見が得られている。脳科学は、心理学などにまたがる学際的な研究分野に対しても積極的な働きかけを行っている。川島隆太は脳を活性化させるゲーム、いわゆる脳トレなどの開発に積極的に関与している。一方、巷では、日大の森昭雄を中心に「ゲーム脳」などの怪しい言説も目立つようになってきた。


これまで、精神分析学では「抑圧された記憶」(無意識下に封印された記憶)というものを想定してきた。 Wikipediaの「抑圧された記憶」の項には次のような記述がある。『このような記憶がある可能性は否定できないが、無理に思い出させようとした一部のフェミニストやセラピストにより「全く性的虐待を受けていない人」が「性的虐待を受けたと思い込む」事態となった。』


エリザベス・ロフタスは、抑圧された記憶(性的虐待等の抑圧されたトラウマ記憶)を引き出そうとすることは、実際には「思い出された嘘」に過ぎないと指摘し、虚偽記憶が作り出される可能性を実験的に証明している。


しかし、これに対し、還元主義者でもあるエリック・カンデルは実際に抑圧を可能にする神経メカニズムも存在することを実験で証明し、この問題はさらにややこしい状態となった。エリック・カンデルは脳の生理学的研究でノーベル賞も受賞しているが、もともとは精神分析医を目指していた。いずれにせよ、脳科学的アプローチを用いた心理学のメカニズムの解明は、最もホットな分野の一つであろう。

よみがえるフロイト
フロイト再来の悪夢

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theme : 擬似科学
genre : 学問・文化・芸術

tag : 脳科学 ゲーム脳 光トポグラフィー 精神分析 還元主義 脳トレ 川島隆太 森昭雄

社会学における科学の誤用

「コントやミルが……、進歩は無条件的あるいは絶対的な趨勢であり、その趨勢は人間性の諸法則に還元しうる、という(間違った)主張(をした)」


ポパー『歴史主義の貧困』中央公論社、p130)


趨勢を科学法則としてとらえることは、今日に至るまで社会学が持つ病理の一つである。社会学は要素還元論によって人間を単純化しとらえ、ハイエクの言う「設計主義的合理主義」に基づき人工国家の建設を企てる。マルクスはその最も典型的な例である。


政教分離は近代国家を形成する上で重要な役割を果たしてきた。市場は文明社会が発展する過程において自然的に成長してきた制度(自生的秩序)である。一方、マックス・ヴェーバー資本主義の発展を宗教と結びつけてとらえようとした。しかし、プロテスタンティズムの宗教倫理は市場経済の発展と全く無関係でありむしろ逆に働く。「たとえプロテスタンティズムが資本主義における十分条件であっても、必要条件とは限らない。



「それは十八世紀初頭のイギリスでは、まだいっさいの欲望を悪徳として警戒していたキリスト教論理の余勢が社会の一部に残っていたことを物語るものである。しかもその論理がすでに経済時代の要求との間にいちじるしい食い違いを生じて、形式は別として実質のうえでは立場を失っていたところに『蜂の寓話』の訴えがあったと見なければならない」(98頁)

[マンドヴィル「蜂の寓話」(訳者・上田辰之助による解説)]


「清教徒の職業観は必ずしもヴェーバーの主張するように、予定の教理との結合によって独善的とさえみえる狭隘な財富中心主義に導いたと断言することは困難である。したがって、諸宗派の清教徒の経済思想を無差別に予定の教理に関係させて、これを資本主義精神の酵母とみなすのは無理のように思われる」(125頁)

[マンドヴィル「蜂の寓話」(訳者・上田辰之助による解説)]


「誰かが支出しない限り、他の誰かの所得は生じない」(マンドヴィル)

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tag : 社会学 科学 マルクス 社会科学 ヴェーバー 資本主義 ハイエク ポパー マンドヴィル 上田辰之助

哲学における科学の誤用

『ギリシャの哲学者は難解な言語を忌避し、日常誰でも使っている平易な言葉を使った』

(田中美知太郎)


人文・社会科学の分野では、数学や物理学の概念や用語の誤用・濫用は決して珍しいことではない。物理学者のアラン・ソーカルは、そのような現状を揶揄するために、ポストモダンの哲学者や社会学者達の言葉をそのまま引用し、さらにそこへ数式や科学用語をちりばめた出鱈目の哲学論文を執筆した。


そして、当時最も権威があると目された雑誌の一つ「ソーシャル・テキスト」誌に投稿し、見事掲載された。雑誌の審査員はソーカルの出鱈目をまったく見抜くことが出来なかったようだ。これは後に「ソーカル事件」と呼ばれるようになった。ソーカルは読者を煙に巻くために安易に数式や科学用語を用いている哲学者の欺瞞を見事暴いて見せた。


パリ症候群」という言葉がある。日本人、特に若い女性にとってフランスは憧れにも近いイメージを持つ人も多いのだろう。しかし、いざ住むとなると、その余りにも日本の文化との違いに鬱になる人も少なくないようだ。ポストモダン思想も、そんなイメージを売りにしたフランスの伝統的な商法に基づいているのかもしれない。


思想の世界は「イメージ」に基づく権威主義が蔓延っている。我々は衒学趣味に嵌っていると見られるスノッブな学者には特に注意しなければならない。彼らは饒舌な言葉遊びで人々を幻惑させるのに長けている。


水木しげる用語によると、大して世の益にならないようなことをしていながら莫大な収入を得る人を「スター」と呼ぶ。私はそれらの産業を総称してイメージ産業と呼ぶことにしている。イメージとはったりで世渡りをする人はヤクザだけではないのだ。インテリヤクザは聞いたことあるが、ヤクザインテリとでも呼ぶべき人種(アイドル学者・御用学者)がいるのは確かだろう。レトリックや雄弁術は政治の世界だけで結構。


きみはソーカル事件を知っているか?

教養主義の没落

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theme : 擬似科学
genre : 学問・文化・芸術

tag : 社会科学 パリ症候群 数学 ヤクザ 水木しげる インテリ 御用学者 宮台真司

経済学における科学の誤用

『フランス革命の理論やマルクス,レーニンの幻想は,抽象的な人間にだけあてはまる。人間関係に関する法則はまだ見つかっていないということを,はっきりと認めなければならない。社会学と経済学は,憶測の科学―つまり似非科学である。』


(アレキシス・カレル「人間 この未知なるもの」 )


この言葉は約70年も前のものだ。カレルが社会学や経済学を似非科学としたのは、マルクスを批判する意味合いも強かったと思う。今では、経済学は確率微分方程式を初めとする応用数学を取り入れることで急速な発展を遂げたかに見える。確率微分方程式は非常に汎用性のある数学的手法だ。


この確率微分方程式の研究によって、伊藤清先生はガウス賞を受賞している。最近のノーベル経済学賞においても、伊藤清先生を初めとする応用数学の分野からの貢献なくしては成り立たなくなってきたといっても過言ではない。


その一方で、経済学において数学・自然科学を誤用した例に、「量子ファイナンス」というものがある。ちなみに、「量子ファイナンス工学入門」はトンデモ本大賞を受賞した。これは少し考えれば当たり前のことで、経済において、例えば波と粒子の性質を同時に持つような量子化された現象が観測される可能性は極めて小さいし、ほぼありえないことだ。


これからの日本においても、科学用語をはったりや言葉遊びの道具として用いる学者がでないことを祈るばかりだ。残念ながら、数学に多少とも縁のある学問であるはずの経済学において、量子ファイナンスというトンデモ学説が主張され、さらに、この研究に文科省からも補助金が出ているとなると、この救いようのない現状に閉口せざるをえない。

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theme : 哲学/倫理学
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tag : 科学 カレル 社会科学 トンデモ 経済学 マルクス

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Author:TheorySurgery
社会科学と疑似科学の際どい境界線を探りながら、文系と理系の学問の乖離やらを考えています。分光学を視点として温暖化懐疑論も展開してます。

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